「独身なら生命保険はいらない」。検索すると、この言い方はいくらでも出てきます。ただ、いらないと判断するにも、何がいらないのかが分かっていないと決めようがありません。
独身だった2023年5月、私は生命保険の営業担当者と会って話を聞きました。入口は2つありました。ひとつは知人からの流れ、もうひとつはクレジットカード会社から電話がかかってきて「無料のFP相談」と案内されたものです。そのときの録音を文字起こししたものが、面談2回分だけ手元にあります。この記事はそれをそのまま使いました。統計のまとめ直しではありません。面談の席で何がどの順番で出てきたか、私が何を聞き返したかの記録です。
この記事で分かることは4つです。
- 営業担当者が、独身相手にまず「死亡」から話を始める理由
- 独身で死亡保障が要る人と、要らない人の分かれ目にある考え方
- 死亡保障より先に検討順が来る保障が何か
- 面談の席で聞き返しておくと、判断材料が手元に残る質問
以下は私が受けた面談での担当者の説明であり、保障の範囲や支払いの条件は会社・商品・約款ごとに異なります。どの保険に入るべきかを決める記事ではなく、判断材料の並べ方だけを書きます。
営業の人が最初に出してきたのは「死亡」だった
面談が始まって、担当者が最初に置いたのはこの一言でした。
担当者
やはりその人生のリスクということを考えたときに、独身の方々はどういったところがリスクかというと、まず代表的なところでいくと、まず死亡ですね
そのあとすぐに、「亡くなったときに何がリスクかというと、亡くなったときにお金がかかる、ここがリスクだ」と続きました。まず死亡が来て、その中身がお金の話になります。
私がその場で挙げたのは、葬儀費用と、住まいなどの後処理、遺品整理に関わるお金でした。担当者はそれを受けて、もうひとつ足しました。ほとんどの人は病院で亡くなる、事故は確率としてはそれほど多くない、だから最後に病院へ支払うお金が発生する、という説明です。そのうえで、こうまとめました。
担当者
こういったものが、いわゆる一時金として必要になる。まとまったお金が一括で必要になるケースが多いということですね
ここに、もう一段だけ現実的な話が乗ります。葬儀をあげるのは、独身の一般的なケースなら親になる。そして香典を受け取ってからその中で払えるかというと、そうではなく、先に葬儀社へ支払うところがスタートになる、という指摘でした。だから独身でも既婚でも、一時金は発生する、と。
なぜ死亡から始まったのか。落ち着いて考えると、理由は3つあります。
- 金額が一点に集中していて、話として分かりやすい。医療費や生活費のように長い期間に散らばらず、まとまった額が一度に必要になる話は、初対面の面談でも共有しやすい形をしています。
- 独身・既婚を問わず発生する。担当者自身が「これは独身の方だろうが、結婚されている方だろうが、かかってくる」と言っています。誰にでも当てはまる話から始めるのは、面談の設計として自然です。
- 生命保険という道具の原型が死亡保障だから。保障の説明を積み上げるとき、土台の形から入るのは順序として合理的です。
つまり「最初に出てきた=独身にとって一番大きいリスクだから」ではない、と読めます。ここを分けて聞けるかどうかで、面談の後半の見え方が変わりました。
独身で死亡保障が要る人と、要らない人の分かれ目
この面談でいちばん意外だったのは、担当者が自分から「用意しなくていい人もいる」と言ったことでした。一時金の話をひととおり終えたあと、こう言われました。
担当者
この一時金を、いわゆるお金を用意しなきゃいけないということが、ひとつのリスクだと捉えるのであれば……じゃあ死亡保障はその分ぐらいは必要なんじゃないか、というふうにお考えになれる方はいらっしゃるかなと
「必要です」ではなく、「そう考える方はいらっしゃる」という言い方です。そして続けて、独身の人がなぜ必要だと考えるかというと、親に支払わせたくない、迷惑をかけたくないという動機が代表的だ、と説明しました。そのうえで、逆側を自分で出してきます。
担当者
例えば一方ですね、親御さんが少しお金をお持ちの方だったら、これは親が払ってくれるから大丈夫、でやってる方もいらっしゃるんですよね……数百万円くらいだったら払ってくれるだろう、こういう価値観の方も当然世の中でいらっしゃるので、そういった方は、死亡保障を保険で用意しなくても別にいいよ、っていうふうに思われる方もいらっしゃる
ここで、何が分かれ目なのかがはっきりしました。分かれ目は金額の大きさではなく、「その一時金を、最初に誰が立て替えるのか」が決まっているかどうかです。
- 立て替える人が決まっていて、その人にとって負担にならないと分かっている → 死亡保障で用意しない選択が成り立つ
- 立て替える人が決まっていない、または決まっているが負担になる → その分だけを死亡保障で持つ、という考え方が出てくる
金額の話だと思って聞いていたら、実は順番の話でした。香典より先に支払いが来る、という指摘がここに効いてきます。最終的に誰かの手元に戻るかではなく、最初に現金を出す人がいるかが問われています。
私が面談前に書き出したリスクの欄には、葬儀費用も遺品整理も入っていましたが、「それを最初に出すのは誰か」という視点はありませんでした。項目は合っていて、順番の観点が抜けていた状態です。
面談で分かった、独身に効くのは死亡保障より先に別のもの
2回目の面談は、働けなくなったときの話が中心でした。ここで見え方が変わります。見せられた設計例は、30歳で加入した場合に、亡くなったときと高度障害になったときに、65歳まで月35万円が出るという形のものでした。私はここで「高度障害」の中身を聞き返しました。担当者の説明は具体的でした。
- 両眼を失明した状態
- 手足4本のうち2本の機能を永久に失った状態(下半身不随、半身不随など)
- 咀嚼機能、つまり噛んで口から物を食べる機能を失った状態
これはあくまで、この面談で説明された範囲です。高度障害として何を指すかは、会社・商品・約款によって細かく違います。
そして、こう続きます。
担当者
結局そういう状態になるということは、普通にお仕事をすることができない。お仕事をできないことは、亡くなったのと同様に収入を得るチャンスがない
私が「そこがニアリーイコールの扱いに、業界ではなっている」と確認すると、そうです、という返答でした。ここが面談全体でいちばん腹に落ちた瞬間です。保険の側は、死亡と「働けない状態」を同じ列に置いて設計している。だとすれば、独身の側から見て切実なのは、死んだ後の一時金より先に、生きていて働けない期間の生活費のほうではないか、という順番が出てきます。
死亡時の一時金は、出す人が決まっていれば代替できます。ところが働けない期間の生活費は、独身なら基本的に自分の口座から出ていき続けます。独身だと、ここだけは代わりに払う人がいません。
医療の側の説明も同じ面談で受けました。よく出てくる三疾病はがん・心臓・脳の病気で、それを広げた五疾病では肝臓と腎臓が加わる、という範囲の話です。また、病気で亡くなったときと事故や災害で亡くなったときを分けて書く習慣があり、どちらでも支払われることを示すために分けている、という説明もありました。
支払いの入口についても確認しました。障害の状態や介護が必要な状態は、保険会社が独自に決めるのではなく、国の認定(障害等級の認定)を受けていることが前提になる、という説明でした。少なくともこの担当者の説明では、自分の感覚で「働けない」と思えば出る、というものではありませんでした。ただしここも商品によって違い、公的な認定を要さず約款で定めた状態で判断するものもあります。
私はこのとき、精神疾患は対象に入るのかも聞きました。個別の病名ごとの扱いはここには書きません。会社と商品と約款で変わるうえ、面談での口頭の説明をそのまま持ち帰ると、対象になる人が「自分は違う」と早合点する側に転びうるからです。面談で確認しておくべきなのは病名の一覧ではなく、支払いの入口が国の障害等級の認定であることと、それが書面のどこに書いてあるかの2つでした。病名で聞くと口頭の答えが返ってきますが、書面のどこかと聞くと約款の場所が返ってきます。
この2回を通した私の受け取り方は、検討の順番としてはこうなりました。
- 働けない期間の収入をどう埋めるか
- 治療にかかる一時的な負担をどう吸収するか
- 亡くなったときの一時金を誰が出すか
死亡保障が不要という意味ではありません。独身の場合、3番目は保険以外でも代替できる余地があるのに対し、1番目は代替先が自分しかないため、検討の順番が違ってくる、という話です。
断り方と、私の場合は断っても失うものがなかったこと
面談前にいちばん構えていたのは、その場で決めさせられるのではないか、という点でした。私の手元にある2回分の録音の中には、その場で決めてください、という場面はありません。あったのは、こちらが用語を聞き返すたびに定義を出してくる、というやり取りの往復です。実際に私が聞き返したのは、こういう質問でした。
- 「五疾病というのは、専門用語ですか。がんとか心筋梗塞とか、そういうもののことですか」
- 「災害というのは、何を想定しているのですか。本人が、ということですか」
- 「回復するまで、という意味ですか」(→ 高度障害は回復しない前提だ、という答えが返ってきました)
- 「精神障害のようなものは、フィジカルなものだけですか、それとも内包していますか」
わからない言葉は、その場で止めて聞き返す。これだけで、面談は「説明を受ける場」から「定義を集める場」に変わりました。断るためのコツというより、断っても何かを持って帰るためのやり方です。
もうひとつ、判断に効いた説明が保障の形の話です。担当者は、いつ亡くなっても同じ金額が出る「四角形」と、時間とともに金額が下がっていく「三角形」があると説明しました。同じスタート金額なら、掛け金は三角形のほうが安くなる、と。
そのうえで、担当者自身がこう言いました。更新型で最初に大きな死亡保険金を設定し、更新のタイミングで金額を下げていきましょう、という前提で入る人もいるけれど——
担当者
こんな簡単に保険の見直しって、一度入ってしまったら、なかなかその担当者の方とやれるチャンスってあまりない、という現実もあったりします
「あとで見直せばいい」を前提に入るのは、実際には難しい。売る側の人がこう言った。私にはこれがいちばん効きました。今の自分に対して過剰な形で入って、あとで直すという筋は現実的に細い、ということです。逆に言えば、いま決めきれないなら、決めきれないまま帰ってよい、という結論になります。
私はこのとき、契約していません。そして困ったことは何も起きませんでした。手元に残ったのは契約ではなく、用語の定義と検討の順番です。これは断っても消えません。
断ったあとに何か言われるのではないか、という心配が先に立つ人は多いと思います。実際に断った側の実感として書いておくと、失うものはありませんでした。むしろ、定義を集めるだけ集めて帰れたぶん、こちらが得をしています。
同じ「無料相談」でも、入口が2種類ある
ここまで書いてきて、あとから効いてきたことがひとつあります。私が保険の面談に入った経路は、性質がまったく違う2つでした。
ひとつは知人からの流れです。もうひとつは、自分が持っているクレジットカードの会社から電話がかかってきて、「無料のFP相談」と案内されたものでした。あとのほうは、私がその人を選んだわけではありません。カードを持っていたら電話が来て、その電話に出たら面談になった、という順序です。この記事で引用している録音は、そのうち片方の担当者との2回分です。
説明の中身そのものには、この記事に書いてきたとおり学べる部分がありました。ただ、入口の作られ方は別の話です。自分で選んでいない相手との面談には、共通する不利があります。
- 相手の立場が事前に分からない。どの会社の商品をどこまで扱えるのか、専属なのかどうかが、座ってから分かります。
- 断る相手が「縁のある人」になりやすい。知人からの流れなら関係が乗りますし、取引先からの紹介なら「せっかく紹介してくれたのに」が乗ります。どちらも、決めることとは関係のない重さです。
- 比較の土俵に立てない。1人としか話していないので、その説明が標準的なのか偏っているのかを確かめる相手がいません。
私が複数の経路で話を聞いてよかったと言えるのは、説明どうしを突き合わせられたからです。1回きり、1人だけだったら、たぶん「そういうものか」で終わっていました。
だから、相談するかどうかより先に、その入口を自分で選べているかだと思います。かかってきた電話に出て決まる面談と、自分で申し込む面談は、同じ「無料相談」でも性質が違います。
それでも一度、相談だけしてみる価値がある人
ここまで読んで自分は要らない側だと思った方は、それで問題ありません。この記事は入ることを勧める記事ではありません。そのうえで、面談を受けて得るものがあるのは、私の実感では次のどれかに当てはまる場合です。
- 亡くなったときの一時金を、最初に誰が立て替えるかを決めていない。金額よりも先に、この一点が決まっていないと、要る要らないの判断そのものが宙に浮きます。
- 働けない期間の生活費を、一度も試算したことがない。独身の場合、ここは代わりに払う人がいません。金額を出してみるだけでも意味があります。
- すでに入っている保険の「形」を説明できない。四角形か三角形か、更新型かどうか。これが言えないと、比較の土俵に立てません。いま払っている保険料が月いくら・年いくらなのかがすぐ出てこない場合は、先に日割り計算ツールで単位を揃えてから考えると早いです。見直す時期そのものを迷っているなら、保険見直しのタイミングと掛けすぎ度チェックのほうが先です。
- 勤務先の制度や公的な仕組みで、働けない期間にどこまで補われるのかを確認していない。ここが分かって初めて、不足分がいくらなのかが出ます。
相談は、加入を決める場ではなく、この4つを埋める場として使うと元が取れます。私が2回の面談で得たのも、結局この種類の情報でした。
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「いる・いらない」を一般論で決めきれないときは、家計と貯蓄の数字を持って第三者に見てもらうのが早いです。ガーデンの無料保険相談(PR)は、相談だけでも利用できます。
保険に絞って相談したい方は、ミライ帖(PR)という選択肢もあります。
逆に、一時金の出し所が決まっていて、働けない期間の生活費も試算済みで、保障の形も説明できるなら、いまは相談しなくてよい状態です。収入と固定費が変わったタイミングで見直せば十分だと考えています。
まとめ
- 営業が最初に死亡を出すのは、金額が一点に集中して説明しやすく、独身・既婚を問わず発生する話だからです。独身にとって最大のリスクだから先に来るわけではありません。
- 要否の分かれ目は金額の大きさではなく「一時金を最初に立て替える人が決まっているか」です。面談で担当者自身が両側を示しました。
- 独身で代替が効きにくいのは働けない期間の生活費です。保険の設計側も、死亡と高度障害を同じ列に置いています。
- 用語はその場で聞き返す。定義を集めて帰れば、契約しなくても判断材料は残ります。「あとで見直せばいい」を前提にした入り方は現実的ではない、という話も面談で出ました。
- 同じ「無料相談」でも、自分で申し込んだ面談と、電話がかかってきて始まった面談では性質が違います。相談するかどうかより先に、入口を自分で選べているかを見てください。
この記事は2023年5月に私が受けた面談での説明にもとづきます。保障の範囲や支払いの条件は会社・商品・約款によって異なるため、実際の判断は契約前の書面で確認してください。
数字を出したうえで誰かに見てもらいたくなったら、ガーデンの無料保険相談(PR)から始めるのが手軽です。
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