年金を受け取っている方から、こんな質問が寄せられます。「年金受給者でもお金を借りることはできますか」「年金受給者のみでお金を借りることができる公的制度は?」。この記事は、その質問に対して2026年8月25日時点で確認できた事実だけを並べたものです。
先に結論を3つ書きます。
- 年金の収入を「対象」として公式サイトに書いている中小の会社は実在します。ただし、どの会社も「年金だけで借りられる」とは書いていません。年齢の上限を公表している会社と、公表していない会社があります。
- 申し込む前に確認できる公的な制度があります。社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度です。65歳以上の方がいる世帯は貸付対象に明記されており、保証人を立てる場合は無利子です。
- 「年金を担保にお貸しします」と持ちかけてくる相手は避けてください。年金を担保にできる制度は1つだけありましたが、その借入申込受付は令和4年(2022年)3月末で終わっています。
この記事が扱うのは、条文に書かれていることと、各社および行政機関が公式に公開していることだけです。審査の基準を公表している会社は、今回見た5社の中にありませんでした。掲載や確認の基準はカードローン記事の調査方針に公開しています。順位づけ・おすすめの提示は行っていません。
結論:確認する順序を先に決めておく
年金受給者の借入れは、探す順序を間違えると時間だけが減ります。理由は2つあります。
1つ目。借入れより条件のよい公的な制度が、高齢者世帯向けに用意されているためです。10万円以内・無利子・保証人不要という資金もあります。これを知らないまま年利18%前後の借入れを選ぶと、支払う総額が変わります。
2つ目。「年金受給者向け」を強く打ち出す広告は、法律の側から見ると不自然だからです。貸金業法は、年金の受給者に借入れを勧める方向の広告表現を明確に禁じています(後述の第16条第2項第4号)。年金の語を前面に出して集客している相手を見かけたら、そこは立ち止まる場所です。
そこで、この記事は次の3段の順に進みます。
①公的制度の確認 → ②中小各社が公式に書いている内容の確認 → ③申し込むかどうかの判断。①を飛ばして③から始めないでください。①は無料で、電話1本から始められます。
先に見る(1)生活福祉資金貸付制度
実施しているのは都道府県の社会福祉協議会です。厚生労働省の公式ページに、貸付対象がこう書かれています。
実施主体:都道府県社会福祉協議会 本事業に関するお問い合わせは、お住まいの地域の市区町村社会福祉協議会にてお受けしております。
貸付対象
低所得者世帯 必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)
障害者世帯 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者等の属する世帯
高齢者世帯 65歳以上の高齢者の属する世帯出典: 厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」(2026年8月25日確認)
「65歳以上の高齢者の属する世帯」が、はっきり対象として書かれています。年金を受け取っていることが除外の理由にはなっていません。制度の根拠は社会福祉法にあります。
(定義)第二条(略)2 次に掲げる事業を第一種社会福祉事業とする。(略)七 授産施設を経営する事業及び生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業
出典: 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第2条第2項第7号(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
条文の言葉は「無利子又は低利」です。実際の貸付条件も厚生労働省が一覧で公開しています。年金生活の場面で使われやすいものを抜き出します。
| 資金の種類 | 貸付限度額 | 貸付利子 | 保証人 |
|---|---|---|---|
| 緊急小口資金(緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合) | 10万円以内 | 無利子 | 不要 |
| 福祉資金 福祉費(療養、介護サービス、住宅の補修、冠婚葬祭、住居の移転などの経費) | 580万円以内(用途に応じて上限目安額を設定) | 保証人あり=無利子/なし=年1.5% | 原則必要。ただし保証人なしでも貸付可 |
| 不動産担保型生活資金(低所得の高齢者世帯に、居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける) | 土地の評価額の70%程度/月30万円以内 | 年3%、又は長期プライムレートのいずれか低い利率 | 要(推定相続人の中から選任) |
注目してほしいのは緊急小口資金の行です。10万円以内・無利子・保証人不要。医療費や葬儀費用で一時的に10万円足りない、という場面であれば、消費者金融より先に検討する価値があります。
福祉資金の福祉費は用途が広く、療養に必要な経費、介護サービスを受けるのに必要な経費、住宅の増改築・補修、冠婚葬祭、住居の移転が明記されています。高齢の世帯で起きやすい出費が、そのまま並んでいます。
相談先は市区町村の社会福祉協議会です。連絡先が分からない場合、厚生労働省は制度のコールセンター0120-46-1999(平日9時〜17時)を公開しています。
ここで正直に書いておきます。この制度は「申し込めば借りられる」ものではありません。厚生労働省の一覧にも償還可能性が考慮されると書かれています。
世帯の収入によっては対象外になります。それでも、確認の電話に費用はかかりません。順番として先に置く理由はここにあります。
先に見る(2)年金担保貸付制度は新規の受付が終わっています
「年金担保」という言葉を検索の途中で見かけた方に向けて、事実関係を整理します。
かつて、独立行政法人福祉医療機構(WAM)が年金担保貸付制度を運営していました。同機構の公式ページには、制度の位置づけがこう書かれていました。
年金担保貸付制度・労災年金担保貸付制度は、国民年金、厚生年金保険または労働者災害補償保険の年金を担保として融資することが法律で唯一認められた制度です。(略)年金を受ける権利は、独立行政法人福祉医療機構から借入れする場合を除いて、譲り渡したり、担保に提供することは法律で禁止されています。
出典: 独立行政法人福祉医療機構「年金担保貸付事業・労災年金担保貸付事業 融資制度のあらまし」(2021年10月27日時点の保存版/同ページは2026年8月25日時点で公開が終了しています)
同じページには、受付終了の時期も書かれていました。
(令和4年3月末で借入申込受付を終了するため、たとえ生活保護廃止後5年間を経過しても融資を利用できない場合があります。)
出典: 同上(2021年10月27日時点の保存版)
制度が新規の貸付から外れたことは、現行の法律でも確認できます。同機構の業務を定める法律の附則には、いま残っている業務が次のように書かれています。
(業務の特例)第五条の二(略)2 機構は、第十二条第一項及び前項に規定する業務のほか、次の各号に掲げる期間において、当該各号に定める業務を行う。
一 令和九年三月三十一日までの期間 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和二年法律第四十号。以下「令和二年改正法」という。)第二十八条の規定による改正前の第十二条第一項第十二号に規定する小口の資金の貸付けに係る債権の管理及び回収の業務出典: 独立行政法人福祉医療機構法(平成十四年法律第百六十六号)附則第5条の2第2項第1号(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
読み解くと、こうなります。年金を担保にした小口の貸付けを定めていた第12条第1項第12号は「改正前の」条文になりました。いま機構に残っているのは、すでに貸した分の債権の管理と回収だけです。その回収業務も令和9年3月31日までと期限が切られています。
つまり2026年8月時点で、年金を担保に新しくお金を借りられる制度は存在しません。返済中の方の手続きは続いていますが、新規の申込みは受け付けられていません。
「年金を担保に」と持ちかけられたときの見分け方
ここが、この記事でいちばん強く書いておきたい部分です。
年金を受ける権利は、法律で譲渡・担保が禁じられています。国民年金と厚生年金の両方に同じ規定があります。
(受給権の保護)第二十四条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
出典: 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第24条(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
(受給権の保護及び公課の禁止)第四十一条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。(略)
出典: 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第41条第1項(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
唯一の例外だった福祉医療機構の制度は、前の章のとおり新規受付を終えています。したがって「年金を担保にする」という形の貸付けを、いま合法的に提供できる相手はいません。そう名乗る相手がいたとすれば、その時点で登録を受けた貸金業者の枠の外にいる可能性が高いということです。
登録を受けずに貸金業を営むことは、法律で禁じられています。
(無登録営業等の禁止)第十一条 第三条第一項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない。
2 第三条第一項の登録を受けない者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 貸金業を営む旨の表示又は広告をすること。
二 貸金業を営む目的をもつて、貸付けの契約の締結について勧誘をすること。出典: 貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号)第11条第1項・第2項(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
罰則も定められています。
第四十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の拘禁刑若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(略)二 第十一条第一項の規定に違反した者
出典: 貸金業法 第47条(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
もう1つ、知っておくと役に立つ条文があります。登録を受けた貸金業者であっても、年金の受給者に借入れを勧める方向の広告・説明は禁じられています。
(誇大広告の禁止等)第十六条(略)2 前項に定めるもののほか、貸金業者は、その貸金業の業務に関して広告又は勧誘をするときは、次に掲げる表示又は説明をしてはならない。(略)三 借入れが容易であることを過度に強調することにより、資金需要者等の借入意欲をそそるような表示又は説明
四 公的な年金、手当等の受給者の借入意欲をそそるような表示又は説明出典: 貸金業法 第16条第2項(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
この第4号があるため、登録を受けた会社は「年金受給者の方どうぞ」という打ち出し方をしません。逆に言えば、年金の受給者を名指しで呼び込む広告そのものが、この条文に触れる方向の表現です。見分けの物差しとして使えます。
相手が登録業者かどうかは、金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで商号を入れれば確認できます。当サイトが掲載している会社の登録番号の確認手順はカードローン記事の調査方針に書いています。
返済や取立てで困っている場合の相談先も置いておきます。日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター 0570-051-051(受付時間9時〜17時、土日祝・年末年始を除く)です。この番号は、今回確認した会社の公式サイトにも案内として掲載されています。消費生活の相談は消費者ホットライン 188です。いずれも無料で使えます。
中小5社が公式に書いている「年金受給者の扱い」
当サイトが貸金業の登録を一次確認している中小のうち、5社の公式サイトを2026年8月25日に1社ずつ見ました。結果を先に表にします。
| 社名 | 年金についての公式の記載 | 年齢の条件 | 収入を示す書類の記載 |
|---|---|---|---|
| ニチデン(株式会社日電社) | フリーローンの貸付条件「ご融資対象者」欄に「年金」の記載あり | 満20歳以上。上限の記載を確認できず | 貸付条件表には記載なし |
| スカイオフィス(株式会社スカイオフィス) | 申込フォームの「職業」欄に「年金」の選択肢あり | 20歳以上。上限の記載を確認できず | フォームに「給与月額」欄あり |
| フタバ(フタバ株式会社) | 年金に触れた記載を確認できず | 20歳以上73歳以下(公式に明記) | 公共料金の領収証書、社会保険料の領収証書、国税・地方税の領収証書・納税証明書ほか。源泉徴収票などが必要となる場合もあり |
| デイリーキャッシング(株式会社デイリープランニング) | 年金に触れた記載を確認できず | 満20歳以上。上限の記載なし | 直近2ヶ月分の給与明細書または源泉徴収票 |
| アルコシステム(株式会社アルコシステム) | 貸付条件としての記載は確認できず。紹介キャンペーンの要項に「年金受給」を除く旨の記載あり(貸付の条件ではありません) | 年齢の条件を公式で確認できず | 健康保険証、運転免許証(お持ちの方)、給与明細書、昨年度の年収が確認できる書類 |
以下、逐語で確認します。まずニチデンです。
貸付条件 ご融資額 50万円迄(要審査)※担保・保証人は原則不要 ご融資対象者 収入のある方(会社員、自営業、パート、アルバイト、年金 等) お利息 実質年率7.3%〜17.52%
出典: ニチデン(株式会社日電社)公式サイト フリーローン「ご利用条件」(2026年8月25日確認)
「年金」が対象者の列に入っています。今回見た5社の中で、貸付条件の欄に年金の語を置いていたのはこの1社だけでした。
ただし、同じサイトのよくある質問では書きぶりが違います。
Q. 私でも借入れできますか? A. 満20歳以上で会社員、自営業、パート・アルバイトなど定期的な収入がある方なら性別や国籍を問わずお申込み可能です。
出典: ニチデン(株式会社日電社)公式サイト フリーローン「よくある質問」(2026年8月25日確認)
こちらには年金の語がありません。年齢の上限も、どちらのページにも書かれていませんでした。年金の収入だけで申し込めるのか、何歳まで申し込めるのかは、公式サイトの記載からは読み取れません。ここは電話で聞く項目です。ニチデンの条件・対応地域・登録番号はニチデン(日電社)の審査と条件を公式情報で確認した記事にまとめています。
次にスカイオフィスです。この会社は、申込フォームの入力項目そのものに答えが出ていました。
希望金額 ※ 万円 (1〜50万) 職業 ※ 会社員 会社役員 アルバイト 自営業・個人事業主 年金 その他 勤務先名 勤務先電話番号 勤続年数
出典: スカイオフィス公式サイト 申込フォームの入力項目(2026年8月25日確認)
選択肢に「年金」が用意されています。職業欄で年金を選べるということは、その申込みを受け付ける想定があるということです。ただし、受け付けることと契約に至ることは別の話です。同社のよくある質問はこう書いています。
Q アルバイトやパートでも借りられますか? A 20歳以上で現在安定した収入があるお客様であればお申込みいただけます。
出典: スカイオフィス公式サイト「よくあるご質問」(2026年8月25日確認)
年齢の上限は書かれていません。スカイオフィスの条件と申込の流れはスカイオフィスの審査と条件を公式情報で確認した記事にまとめています。
3社目のフタバは、5社の中で唯一、年齢の上限を数字で公表していました。
申込基準などありますか? 20歳以上73歳以下の安定した収入と返済能力を有するお客さまが対象となっております。
出典: フタバ株式会社 公式サイト「よくあるご質問」(2026年8月25日確認)
高齢の申込みについても、独立した項目で答えています。
高齢者でも申込はできますか? 73歳以下の方で安定した収入と返済能力を有するお客さまでしたらお申込みいただけます。ただし、審査の結果ご希望に添えない場合もございますので、ご了承ください。
出典: フタバ株式会社 公式サイト「よくあるご質問」(2026年8月25日確認)
年金の語はありませんが、「安定した収入と返済能力」という書き方で、収入の種類を限定していません。上限が数字で分かるぶん、73歳を過ぎているかどうかで自分の状況を判断できます。ここは読者にとって扱いやすい情報です。
4社目のデイリーキャッシングは、条件は短く、書類の指定が具体的でした。
ご利用条件 融資条件 満20歳以上で定期収入のある方 融資金額 1万円〜300万円 実質年率 8.5%〜18.0% (略)必要書類 本人確認書類(運転免許証など) 直近2ヶ月分の給与明細書または源泉徴収票 印鑑
出典: デイリーキャッシング(株式会社デイリープランニング)公式サイト「フリーローン」(2026年8月25日確認)
年齢の上限はありません。一方で必要書類が「給与明細書または源泉徴収票」に限定して書かれています。年金だけの収入だと、この2つは手元にありません。年金証書や年金の振込通知書で代えられるかどうかは、公式サイトの記載からは分かりませんでした。これも電話で聞く項目です。
5社目のアルコシステムは、扱いに注意が要ります。同社のサイトで年金の語が出てくるのは、貸付の条件ではなく紹介キャンペーンの要項でした。
キャンペーン適用条件について(略)(2)お友達は、無職、自営業、専業主婦、年金受給、生活保護等を除く満20歳以上とします。
出典: アルコシステム(株式会社アルコシステム)公式サイト「キャンペーン要項」(2026年8月25日確認)
これは謝礼を出す紹介キャンペーンの適用条件であって、「年金受給者には貸さない」と書かれたものではありません。誤読しやすい箇所なので、そのまま書いておきます。同社の貸付そのものの年齢条件は、公式サイトで確認できませんでした。
必要書類のページには「給与明細書」と「昨年度の年収が確認できる書類(源泉徴収票や所得証明書など)」が並んでいます。所得証明書が挙がっている点は、年金の収入でも用意できる余地があるという意味では手がかりになります。ただし断定はできません。
5社を通して言えることは1つです。「年金だけの収入で契約できる」と書いている会社は、今回の5社の中に1社もありませんでした。書かれているのは、対象に年金を含む(1社)、職業欄に年金の選択肢がある(1社)、収入の種類を限定していない(残り3社)というところまでです。掲載社の一覧と各社の登録番号・条件は中小消費者金融の選び方(登録を実確認した一覧)にまとめてあります。
法律の枠:総量規制の「年収」に年金は入ります
ここは誤解の多い部分なので、条文で確認します。
貸金業者は、年収の3分の1を超える貸付けを個人に対して行えません。総量規制と呼ばれるものです。その「年収」の定義が、貸金業法にこう書かれています。
(過剰貸付け等の禁止)第十三条の二(略)2 前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、(略)当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に三分の一を乗じて得た額をいう。次条第五項において同じ。)を超えることとなるもの(略)をいう。
出典: 貸金業法 第13条の2第2項(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
条文は「内閣府令で定めるもの」と書いています。その内閣府令が、次の条文です。
(年間の給与に類する定期的な収入の金額等)第十条の二十二 法第十三条の二第二項に規定する年間の給与に類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 年間の年金の金額
二 年間の恩給の金額
三 年間の定期的に受領する不動産の賃貸収入(事業として行う場合を除く。)の金額
四 年間の事業所得の金額(過去の事業所得の状況に照らして安定的と認められるものに限る。)出典: 貸金業法施行規則(昭和五十八年大蔵省令第四十号)第10条の22第1項(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
第1号に「年間の年金の金額」がはっきり置かれています。年金は、総量規制の枠を計算するときの収入として、法令上そのまま数えられます。年金の種類による区別は、この条文には書かれていません。
ここから言えることと、言えないことを分けます。
- 言えること:年金しか収入がない場合でも、その年額の3分の1という枠は法令上は計算できます。年金額が120万円なら、枠は40万円です。
- 言えないこと:枠が計算できることと、会社が貸すことは別です。貸金業法第13条第1項は「顧客等の収入又は収益その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査しなければならない」と定めています。返済能力の判断は各社が行い、基準は公表されていません。
提出する書類についても、条文に年金の名前が出てきます。
(資力を明らかにする事項を記載した書面等)第十条の十七 (略)次に掲げる書面又はその写し(略)とする。(略)
一 源泉徴収票(略) 二 支払調書 三 給与の支払明細書 四 確定申告書 五 青色申告決算書 六 収支内訳書 七 納税通知書 七の二 納税証明書 八 所得証明書 九 年金証書 十 年金通知書 十一 個人顧客の配偶者(略)に係る前各号に掲げるもの(略)出典: 貸金業法施行規則 第10条の17第1項(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
第9号「年金証書」、第10号「年金通知書」。この2つは、法令が認めている収入を示す書類です。同条第2項では、年金通知書は「一般的に発行される直近の期間に係るものであること」が要件とされ、年金証書はこの直近要件の対象から外されています。
つまり、制度の側では年金受給者が書類をそろえられる形になっています。ただし、会社が自社の必要書類欄に何と書くかは別です。前の章で見たとおり、デイリーキャッシングは「給与明細書または源泉徴収票」と書いていました。条文に年金証書があることと、その会社が年金証書を受け付けることは、同じではありません。ここを混同しないでください。
申し込む前に、電話で聞く3つ
公式サイトの記載だけでは埋まらない部分があります。今回の5社では、次の3点がどこにも書かれていませんでした。だから電話で聞きます。
- 年齢の上限は何歳ですか。5社のうち数字を公表していたのはフタバの73歳だけでした。残り4社は記載がありません。無いのではなく「書かれていない」だけの可能性があります。申し込む前に、この1問で結果が変わることがあります。
- 収入を示す書類として、年金証書や年金の振込通知書は使えますか。法令上は認められている書類ですが(施行規則第10条の17第1項第9号・第10号)、各社の必要書類欄には給与明細書や源泉徴収票と書かれています。手元にある書類の名前を、そのまま伝えて確認してください。
- 自宅への郵送物はありますか。あるとしたら差出人はどう書かれますか。同居のご家族に知られたくない事情がある場合、ここは先に確認する項目です。契約書面の交付方法は会社によって違います。
電話をかける前に、次の3つを手元に置いてください。年金証書または年金の振込通知書、本人確認書類、いま借りているところの社名と残高のメモ。この3つは、社会福祉協議会に相談する場合もほぼ同じものが要ります。どちらへ進んでも無駄になりません。
もう1点。電話は日中の時間帯にかけてください。今回見た5社はいずれも平日日中の受付です。夜間に電話をかけて「すぐ振り込みます」と応じる相手がいたら、それは今回の5社ではない別の相手です。
申し込む前に立ち止まったほうがよい場面
借りることが答えにならない場面があります。3つ挙げます。
1つ目。返済の原資が年金しかなく、その年金で毎月の生活が回っていない場合。この状態で借りると、翌月からの生活費がさらに減ります。年金は偶数月にまとめて振り込まれるため、返済日と入金日のずれで管理が難しくなることもあります。まず社会福祉協議会へ相談してください。
2つ目。医療費や介護費が理由の場合。この用途は、生活福祉資金の福祉費に「負傷又は疾病の療養に必要な経費」「介護サービス、障害者サービス等を受けるのに必要な経費」として明記されています。無利子または年1.5%の枠が使える可能性がある出費を、年利18%前後で借りる理由はありません。用途で先に振り分けてください。
3つ目。「年金を担保に」「年金受給者の方限定」といった言葉で近づいてきた相手からの提案の場合。前の章のとおりです。この2つに当てはまる相手からは離れてください。
返済中の取立てで困っている場合、貸金業法第21条第1項が取立て行為を規制しています。同項第1号は「正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ」ることを、第5号は「債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること」を禁じています。登録を受けた業者であっても、これらは違法行為です。相談先は日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター 0570-051-051です。
よくある質問
年金受給者でもお金を借りることはできますか
公式サイトの記載から言えるのは、年金を収入として対象に含めている会社が実在するところまでです。ニチデンは貸付条件の対象者欄に「年金」を挙げ、スカイオフィスは申込フォームの職業欄に「年金」の選択肢を置いています(いずれも2026年8月25日確認)。ただし「年金だけで借りられる」と書いている会社はありませんでした。返済能力の調査は貸金業法第13条第1項で義務づけられており、判断は各社が行います。
年金受給者のみでお金を借りることができる公的制度はありますか
社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度です。厚生労働省の公式ページに「高齢者世帯 65歳以上の高齢者の属する世帯」が貸付対象として明記されています。緊急小口資金は10万円以内・無利子・保証人不要、福祉費は580万円以内で保証人を立てれば無利子です。相談先は市区町村の社会福祉協議会、制度のコールセンターは0120-46-1999(平日9時〜17時)です。なお、年金を担保にする公的な貸付制度は、令和4年3月末で借入申込受付が終わっています。
障害年金の受給者でもお金を借りることができますか
正直に書きます。今回見た5社の公式サイトには、障害年金についての記載が1つもありませんでした。だから「借りられる」とも「借りられない」とも書けません。
言えるのは法令の側だけです。総量規制の年収を定める貸金業法施行規則第10条の22第1項第1号は「年間の年金の金額」と書いており、年金の種類を区別していません。収入を示す書類として第10条の17第1項に年金証書・年金通知書が挙がっている点も同じです。
したがって、扱いは各社の判断になります。電話で直接確認してください。そのとき「障害年金です」と種類を伝えて、収入として扱われるか、どの書類を出せばよいかの2点を聞くと話が早く進みます。
年金証書だけで申し込めますか
法令の側では、年金証書と年金通知書が収入を示す書類として認められています(施行規則第10条の17第1項第9号・第10号)。ただし各社の必要書類欄には、給与明細書や源泉徴収票と書かれています。デイリーキャッシングは「直近2ヶ月分の給与明細書または源泉徴収票」、アルコシステムは「給与明細書」と「昨年度の年収が確認できる書類(源泉徴収票や所得証明書など)」です。年金証書で代えられるかは会社ごとの判断になります。
「年金担保でお貸しします」という業者を見つけました
その提案には応じないでください。年金を受ける権利は国民年金法第24条・厚生年金保険法第41条で担保に供することが禁じられており、唯一の例外だった福祉医療機構の制度は令和4年3月末で借入申込受付を終えています。登録を受けずに貸金業を営むことは貸金業法第11条第1項が禁じ、第47条は十年以下の拘禁刑または三千万円以下の罰金を定めています。年金証書を預けるよう求められた場合はとくに注意してください。相談は消費者ホットライン188、または日本貸金業協会 0570-051-051へ。
家族に知られずに申し込めますか
今回の5社は、いずれも郵送物の有無と差出人の表記について公式サイトで明記していませんでした。これは電話で確認する項目です。フタバは「自宅や勤務先に申込の確認連絡がきますか?」という質問項目を設けており、本人確認と申込内容の確認の連絡を行う旨を記載しています。連絡の方法と時間帯は、申込みの前に確認しておくと落ち着いて対応できます。
まとめ
- 年金の収入を対象として公式に書いている会社は実在します。ニチデンは貸付条件の「ご融資対象者」に「年金」を挙げ、スカイオフィスは申込フォームの職業欄に「年金」の選択肢を置いています(2026年8月25日確認)。ただし「年金だけで借りられる」と書いている会社は5社の中にありませんでした
- 年齢の上限を数字で公表していたのは5社中1社(フタバ・73歳以下)。残る4社は上限の記載を確認できませんでした。記載がないことと上限がないことは別です
- 借りる前に、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度を確認してください。65歳以上の高齢者の属する世帯が貸付対象に明記され、緊急小口資金は10万円以内・無利子・保証人不要です。相談は市区町村の社会福祉協議会、コールセンターは0120-46-1999
- 年金を担保にする貸付制度は、令和4年3月末で借入申込受付が終わっています。いま福祉医療機構に残っているのは既存債権の管理と回収だけで、それも令和9年3月31日までです(附則第5条の2第2項第1号)
- 「年金担保」を名乗る勧誘は避けてください。年金を受ける権利は国民年金法第24条・厚生年金保険法第41条で担保が禁じられています。年金受給者の借入意欲をそそる広告は、登録業者であっても貸金業法第16条第2項第4号で禁じられています
- 総量規制の「年収」に年金は入ります。貸金業法施行規則第10条の22第1項第1号が「年間の年金の金額」と定めています。年金証書・年金通知書も、収入を示す書類として第10条の17第1項に挙がっています
- 公式サイトに書かれていない3点は電話で聞いてください。年齢の上限、年金証書で足りるか、郵送物の有無と差出人。この3問で判断が変わります
年金受給者の借入れは、情報が少ないぶん「探し続ける」時間が長くなりがちです。先に公的制度を1本電話で確認し、そのうえで各社の年齢条件を電話で1問聞く。この順で進めれば、確認する回数は数回で済みます。
各社の条件と登録情報の確認手順は個別記事に、掲載社の並びと選び方は次のページにまとめています。
この記事の情報は2026年8月25日に各社の公式サイト、厚生労働省の公式ページおよびe-Gov法令検索で確認したものです。独立行政法人福祉医療機構の年金担保貸付制度に関する記載は、同機構の公開が終了しているため2021年10月27日時点の保存版から引用しています。各社の申込条件・必要書類・年齢条件、および公的制度の内容は変更されることがあります。申し込む前に各社の公式サイトおよび窓口で最新の内容をご確認ください。この記事は順位づけ・おすすめの提示を行っておらず、特定の会社への申込みを勧めるものではありません。次回更新予定:2027年2月25日。

